大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)174号 判決

事実

本件物件は、もと訴外山崎昌太郎の所有であつたが、右山崎は訴外大福産業株式会社(訴外会社)との間において、昭和三四年八月二五日第一物件につき、同月二一日第二物件につき、それぞれ代物弁済の予約をなし、権利者を訴外会社、登記原因を右各代物弁済予約とする、大阪法務局中野出張所昭和三四年八月二五日受付第二四〇九六号の所有権移転請求権保全仮登記を了した。

原告(被控訴人)は昭和三五年五月六日、訴外会社から右第一、二物件につき同会社の有する右予約完結権の譲渡を受けて同月一一日その旨の付記登記を了していたが、同年六月一六日、原告山崎間の裁判上の和解において右予約完結権の行使に基き代物弁済契約が成立した。

被告(控訴人)は本件第一、二の各物件について、不動産強制競売の申立をなし、昭和三五年五月二七日同月二五日付競売手続開始決定を原因とする登記をなした。

以上の事実関係の下において、原審大阪地裁昭和三六年一月三日判決は、つぎのとおり判示した。

「原告が右仮登記に基き所有権移転の本登記をなしたときは、右所有権の取得は仮登記の順位によつて保全される結果、被告が昭和三五年三月二七日にした強制競売の申立はこれに後れることになることは明らかであるから、その意味において、被告は不動産登記法第一〇五条第一項、第一四六条第一項に所謂本登記につき登記上利害の関係を有する第三者に該当するものといわなければならない。

そして、不動産登記法第一〇五条第一項、第一四六条第一項によれば、右利害関係を有する第三者たる被告は、仮登記権利者たる原告が本登記となすべき実体上の要件を具備した場合においては、本登記手続を申請するにつき承諾(実質的には自己の関係登記より先順位に占位すべきことにつき承認)の意思表示をなすべき義務を負うものと解せられるから、右義務の履行を求める原告の本訴請求は正当である。」

控訴審判決は、つぎのとおり、原判決をそのまま引用した。

理由

当裁判所が被控訴人の本訴請求を正当として認容する理由は、原判決の理由説示と同旨であるから(ただし一部訂正省略)、ここにそれを引用する。

よつて、本件控訴は、理由がないからこれを棄却。(ただし、原判決主文第一項に「同月二一日」とあるは「同月二五日」の誤記であることは、その登記番号から見て明白であるからこれを更正する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例